三毛縞斑という男③(完)

※ この記事にはあんさんぶるスターズ!!のイベントストーリー「探り合いの出目/双六盤上戦」までのネタバレを含みます。
また、この記事は先日公開した「三毛縞斑という男② 」の続きになっています。まだご覧になっていない方は前の記事に目を通してから、こちらの記事をお読みください。

三毛縞斑が分からない!!

©️Happy Elements/あんさんぶるスターズ!!より

 

「――全力で!全員に手を差し伸べるのは無理でも、せめて俺の手が届く範囲にいる人々は守る!助けるっ」
(第一部/第五章「一番星/154話Go west」にて、三毛縞斑の発言)

「だからって、諦めたくない。神さまは何もしてくれないし、俺は生きてるんだから、目の前で苦しむ大好きなひとにせめて手を差し伸べたい」
(「新参!目覚めの暗夜行路」にて、三毛縞斑の発言)

三毛縞斑の正義や救済は、限定的なものである。三毛縞斑は、自分の興味がない人のために自分を犠牲にできるほど、優しく愛に満ち溢れた人ではないのだ。しかし一度でも自分と関わって、大切にしてくれた人間のためならなんだってできる、そこに自己犠牲も厭わない。だから、彼は全ての人を助ける「ヒーロー」でも「神さま」でもない。彼もまた、人間であり、我が子のためなら死ねる「母親」なのである。三毛縞斑が「MaM」で「ママ」なのは、そういう自己中心的な自己犠牲の愛で語られる。しかし、また彼は野生動物の掟で動いているきらいがあるのでその愛情を突き通す時、必ず敵に牙をむく。自分の守りたいものを守るためなら、自分を含め全世界を傷付けてしまっても良いと思っている。

「ひとを傷つけたくせに、俺と同じよう、理想や夢を語る資格を失ったはずの腐れ外道のくせに……」
「腹が立つし怨めしいし、妬ましくって暴れたくなる」
(「躍進!夜明けを告げる維新ライブ」にて、三毛縞斑の発言)

「俺の大事なものを傷付けた連中が、へらへら笑いながら生きているのが気に食わない、この手でせめてブン殴ってやりたい」
「そう思いながら生きている。実際に行動もしている。そのせいで、そんな俺を心配して、俺が大事にしたかった人たちの顔はどんどん曇る」
「どうしてだろうなあ?こんなはずじゃなかったのになあ?」
(「スカウト!色彩百花」にて、三毛縞斑の発言)

上記の通り、三毛縞斑には擁護できない凶暴性がある。この凶暴性の母性愛の二面性が三毛縞斑の「分かりづらさ」に繋がっているのではないか。なにも、この二面性はお人好しで凶暴という二面性に留まらない。人間でも怪物でもない「巨人」の三毛縞斑や「ヒーロー」あるいは「アンチヒーロー」の三毛縞斑にも通じるものである。つまるところ、彼は自己矛盾の塊なのだ。故に好き嫌いが分かれるキャラクターでもある。
私は解釈を深める一環で推しのアンチ垢も見に行くのだが、大体のアンチ垢は彼の、”あんさんぶるスターズにおける人外らしさ”を持ち合わせていながら、”子どもっぽい人間らしさ”が同居してる部分を嫌っている節がある。彼のどっちつかずさはリアリティある「人間らしさ」の証左であり、偶像とニアリーイコールな「二次元のキャラクター」として異色を放つ。私はそこが「三毛縞斑」というキャラクターの特異性であると思っているし、そこにハマってこんなことになってしまった。三毛縞斑には人外らしい万能さと気高い自己犠牲の精神がある一方、憎悪や復讐に囚われたり、自分の好きな人さえ助かれば良いという利己的な人間臭さがある。その胡乱さは「斑」というキャラクター名からも明らかである。つまるところ、彼は意図して「分かりにくく」なるように作られたキャラクターなのだ。1回目の記事の冒頭で彼のことを「分からない!!」と言ったが、実はそこが三毛縞斑の最もたる魅力であると私は思っている。

他人からの理解を得ようとしない気難しい性格、それでいながら孤独を嫌う寂しがり屋。強くて孤独で美しいひと。それが三毛縞斑なのだ。ここまでくると、解釈というよりもはや信仰かもしれないが、三毛縞斑は、私なんぞが理解できないくらい自由に生きてほしい。それこそ、私が好きで好きでたまらない「三毛縞斑」という偶像だからである。
三毛縞斑よ、どうかこれからも私みたいな薄っぺらい人間が語れてしまう文脈にはなってくれるな。そんな祈りをこめながら今日もオタクは叫ぶのだ。

「三毛縞斑が分からない!!」

 

おわりに……

長くに渡る乱文にお付き合いいただきありがとうございました。もし、この記事を読んで少しでも三毛縞斑という男に興味を持っていただいた方は、藤祭からラストミッションまでの三毛縞斑主要ストーリーを公開順に読んでいただきたい。次年度(4月末)からはストーリー内の時間が1年動くので、追いつくなら今だ。お手持ちのスマートフォンにて「あんさんぶるスターズ!!basic」を検索していただきたい。また音ゲーも嗜む方なら、容量は大きいが「あんさんぶるスターズ!!music」も入れていただければ更にお楽しみいただけるとお約束しよう。
この際、三毛縞斑にハマらなくても良いのでこの記事を通じて、新たにあんさんぶるスターズに触れる方や再熱する方がいらっしゃれば僥倖の極みである。

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コメント

  1. 鳥羽 より:

    あんスタのことは前から気になっていたので曲のみ聞いていましたが半年ほど前に本格的にアプリも入れてプロデューサーとしての活動を始めたら三毛縞にハマりました。
    中の人が元々好きな方だったというのもあってハマるのも時間はかかりませんでした。
    読んでいて確かに!と、頷くことが多かったです。私には中々言語化出来なかったものですから。
    愉快痛快で元気を出させてくれた、君印や辻風で背中を押してくれた彼を好きになった理由が少し、もっと深くなりました。
    母性のバーゲンセール東奔西走世界のお祭り男三毛縞斑を好きになって良かったなとしみじみ思います。
    素晴らしい記事でした、ありがとうございました。

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