こんころです。執筆時点ではお盆明けくらいだったのよ。ほんとよ。
前回に引き続き、サマーカップの感想をだらだら書いていきます。今回はシニア編。五輪争いも絡むのでさあ大変。
てかFGO二部終章と五輪最終選考(全日本)被るの確定しました。マジでどうしよう。
各選手感想
3.シニア男子
鍵山優真
前回の五輪では2位、その後は怪我で沈んだシーズンがありつつも、その翌シーズンには新ジャンプ(4F)を引っ提げて返り咲き、今やすっかり日本のエースになっている鍵山選手。
SPはスティービー・ワンダーの名曲をピアノとギターでアレンジした「I wish」。今大会ではジャンプこそ不調でしたが、振付は既に完璧。でも余裕はなさげでした。まあ仕方ない。
FSは「トゥーランドット」ですが、クリストファー・ティン氏が考案した新しいエンディングテーマを編曲したもの(※)であるため、全体的に新解釈な雰囲気。ラストが「誰も寝てはならぬ」なのは同じなので、そこで初めて「トゥーランドットだ!」となる感じ。
※トゥーランドットは未完の作品で、従来の上演では弟子が補作したエンディングが採用されていた模様。ただ、エンディングの補作にはさまざまなバージョンがあり、ティン氏のエンディングもその内の一作。
ラストだけでなく、全体的にカーテンコール感というか、ハッピーエンドを眺めている気分になるプログラムになっていました。
まだ若手な方なのでミラノが終わってももう一回くらいは五輪を目指しそうですが、今シーズン引退っぽい選手に比べても「引退しそう」感が強いFSかも。というか来シーズン以降のプログラムが想定できなさすぎる。フィニッシュポーズが北京と同じなことといい、最終回すぎないか???
山本草太
SPは2022~2023シーズン以来の再演となる「yesterday」、FSは新プログラム「ハレルヤ」と、全体的に雑味のないプログラムを持ってきました。らしいといえばらしいのですが、昨シーズンのような印象の強さはあまり感じなかったかも。とはいえ、FSの澄み渡るようなエモーショナルさには代え難いものがあったと思います。
友野一希
SPは「That’s it(I’m crazy)」。振付はいつもの友野選手という感じの路線でしたが、重低音に合わせて一つ一つの振付を大事にすべきプログラムなのかなと感じました。
あと片手側転がまあまあ良かった。流石に某The fire withinほどではありませんが、久しぶりに効果的な側転を見た気がする。
FSは2023~2024シーズン以来の「Halston」。こちらは当該シーズン以降も高橋大輔さんのアイスショーでレギュラー化するくらいの大人気プログラムということで、期待大の再演です。今回も序盤のミスを除けばほとんど瑕疵のない、素晴らしい演技を見せてくれました。とはいえやはりノーミスで見たい。
壷井達也
昨シーズン、初めての全日本表彰台(3位)に輝き、世界選手権にも出場した壷井選手。五輪代表争いに向け、その存在感を確かにしたと言えるでしょう。
そんな五輪シーズンのSPは「Anniversary」。スケーティングが昨シーズンと比べてもさらに力強くなったことで、エモーショナルな楽曲に負けないくらいの鮮烈さが出た演技となっていました。でもStSqはもう一段階上の盛り上がりが欲しいかも。
FSは継続の「道化師」。4回転3本の新構成が完全にはまるにはもうちょっと時間が必要そうな感じではありますが、基礎力が上がったおかげが全体的には良くなっている気がします。PCSも上がったし。
三浦佳生
SPは「Sunset on M./Sturm I-Fear」。路線としては今までのリショー振付SP二つを融合させつつ、リショー濃度を高めた感じになっていました。しかし三浦選手なら昨シーズンのSPの方が安定してPCS貰えそうな気もする。とりあえず側転は省きませんか…?と思っていたら次戦で省いたらしい。
FSは「オペラ座の怪人」。ジャンプは置いておくとして、プログラムのアプローチはやっぱり素晴らしいなと感じます。4回転ジャンプが一つの表現になる稀有な選手ですので、こういうつよつよ楽曲は本当に似合う。StSqもいい構成です。
杉山匠海
もう私の好みで入れてる。しなやか男子好き。
SPは「No time to die」。007といえばアクションをガチガチにはめたり、ボンドガールの色気を入れたりするプログラムが多いイメージですが、杉山選手は男性の色気(ダンディというよりはスタイリッシュ方面)が強いプログラムに作ってきました。
FSは「Nureyev(ホワイトクロウ)」。ロシアのスケーターが大好きな杉山選手、今回もロシアスケーターが使った楽曲を持ってきたようですが、常にただのオタ活にとどまらない素晴らしいものを見せてくれます。
一つ一つの体の動き、ポージングをスケートと連動させつつ、音楽を表現するツールとして絶えず機能させ続けるような演技。間違いなく杉山選手の強みであり、見るたびに神技だと思わされます。今シーズンのFSはそんな彼の技術が凝縮された、芸術性の一つの極致のようなプログラムです。
シニア女子
千葉百音
SPは童謡「さくらさくら」のオーケストラバージョン。五輪シーズンに自国の曲を持ち込む試みは良いと思いますし、雰囲気も合わないわけではない。しかしどこかピンと来ない気がします。
そもそも元の童謡からして「雰囲気」だけ、情景だけの楽曲で時間の流れすらほとんど存在しないため、ストーリーが作りづらいのかもしれません。衣装へのこだわりからして朝→夜それぞれの桜を表現したいのでしょうが、それはそれでやはりストーリー性にやや欠けるものがあります。これに何かしらの「解答」を出せるかどうかが今シーズンの課題になりそう。見る側からしても。
少なくとも次戦は昨季SP「last dance」に切り替えるみたい。点数もらえそうなのは圧倒的にこっちですが、五輪に出るなら和プロもいいよなぁということで迷いどころ。いや私が迷う意味とか無いんだけど。
FSは「ロミオとジュリエット」。アレンジは数多あれど、フィギュアに使われる部分はほぼ決まっているロミジュリ。千葉さんも例に漏れず、リプニツカヤが使ってたパートと羽生くんが使ってたパートだなって感じの編曲です。
しかし、千葉さんの場合は解釈がかなり独特というか、骨太。ジュリエットのパーソナリティや心情変化に注力することで、悲哀にも激情にも寄りすぎない、しかし芯の強いロミジュリに仕上がっています。
三原舞依
SPは2022~2023シーズンの「戦場のメリークリスマス」、FSは2023~2024シーズンの「木星」と、過去の名作プレイバックのような選曲。一部のスピンなどに変更が見られましたが、雰囲気はそこまで変わらない気がします。
全体的に立て直し中ながら、できるところの最大限までは発揮できた演技だったと思います。ここから伸びる余地も全然あるんだから恐ろしい。難病を患おうが足が危うかろうが翌シーズンにはトップレベルまで舞い戻ってくるの凄すぎる。
住吉りをん
SPは「Alba lullaby」。気品溢れる佇まいとたおやかな所作が合わさり、ピアノを中心に奏でられる繊細ながらも優しく、愛情に満ちた楽曲をこれ以上ないほどによく表現しています。
FSは継続の「Adiemus」。生命の輝きに満ち溢れた演技は健在で、豊穣の女神のような雰囲気すら感じられます。結構五輪シーズンっぽいので継続でも違和感がない。
渡辺倫果
SP、FSともにシニアデビューシーズンのプログラムを持ってきましたが、そのどちらも大幅に進化しています。失敗も多かったものの、失敗の仕方まで含めて成長が見られます。切り替えが早くなったような気がする。
SP「ロクサーヌのタンゴ」は今シーズン用に新たに作り直した様子ですが、雰囲気自体はそこまで変わっていません。ただ、3A ~3Lzがあまりにタイトな振付なのはちょっと気になる。
FS「仁」のラストをStSqに変更したのは良い判断だと思います。手前のスピン二連続も魅せ方がちゃんと意識されたものになっていて良い。
余談:次戦ではなんと3A+3Tと4Sも投入。点数には繋がりませんでしたが、失敗の仕方としては悪くなかった気がする。五輪で全部決まればロシア女子も超せるかも。
河辺愛菜
SPは「ララランド」。めっちゃ可愛い(語彙力)。五輪シーズンSPもやや可愛い寄りでしたが、こっちはもう全力可愛いです。かわ(以下略以下同文
FSは「Fountain of Eternity/Keeper of the Night」。夜の到来を謳うような壮大なプログラムで、雰囲気作りも悪くない。上限の高さというか、完成系が素晴らしいものになるだろうなと感じさせるものは確かにあります。全日本が楽しみ。
松生理乃
SPは昨シーズン伝説となった至高のFS「Lux Aeterna」をSP向けに作り直したもの。要素間の窮屈さは否めませんが、やはり素晴らしい。
FSは「くるみ割り人形」。ワンフットで描かれる美麗な曲線の数々に、終盤の大きな円を描く連続スパイラル。松生さんの技術でファッションショーでもしてるのかってレベルで技巧を詰め込んだプログラムになっています。巨匠ローリー・ニコルによる極限のプロデュース。私は咄嗟に反応できない。助けてください。
余談:こちらのくるみ割り人形、使用パートはサンタアビーちゃんの宝具BGMと同じ「pas de deux」。
中井亜美
SPは「道」。序盤の曲想が特に中井選手に合っているなという印象を受けたのですが、中盤、終盤にかけても曲の強さを活かしつつ、終始違った形で中井選手らしさを出せるプログラムに仕上がっていました。
FSは「What a wonderful world」。曲の権利関係でプログラム作りが遅れるというアクシデントがありながら、急造と思わせないほどのプログラムに仕上げた上で3Aも決めてきました。
FSのコンビネーション構成は今までのもの(+3T、+1Eu+3S、+2A)から変更され、+2T、+3T、+2A+2A(シークエンス)に。より点を出せる構成にした上で、更に3A2本目まで狙えるプログラムになっています。戦意が高い。
総じて、極めて戦略的なプログラム作りだなと感じました。中井選手のパーソナリティはもちろん、シニア上がりたてという状況も全て詰め込んだ一世一代の計略とすら思えます。
三宅咲綺
SPは「Think of me」。神戸組(中野園子門下)らしいパワフルなスケーティングと三宅選手特製の特大3T+3Tなどが合わさり、ボーカルと合わさって瑞々しい世界観を作り上げています。
FSは「ナザレのマリア」。3Aを組み込んだ上で、日本女子トップレベルの争いに加えても違和感ないほどのプログラムを持ってきましたが…3Aに注力したせいか、あちこちに不具合が出てしまった様子。しかしまだ夏ですし、これから仕上げていけば全日本には間に合うはず。
3A投入が現実的である以上、他選手に対してアドバンテージは少なからず存在するわけですから、五輪争いにも加わることは可能でしょう。
これにてシニア男女は終了。五輪争い、男子は混沌としつつも鍵山三浦佐藤山本友野壷井の6強まで絞れてきたかなという感じですが、女子は上記7名に青木吉田坂本樋口が加わる総勢11名がトップ争いを繰り広げるため、もうめちゃくちゃ。
まあ流石に坂本さんは確定とみなすにしても10名。復帰するであろう紀平さんを含めるならやはり11名。大変です。
とはいえ昨シーズンの世選代表でもある坂本樋口千葉が硬そうではある。新葉ちゃんと千葉さんは回転不足やら調子の上下やらで浮き沈みがありそうだけど。
コメント