返信先: リレー小説

#683
アバター雪兎
ゲスト

「もう、だめだ」
掲示板がガラガラと音を立てて地に落ちる。僕はその傍に膝と手を着いて、もう地面しか見えない。
 はらはら、はら、幾枚も紙きれが降ってくる。そこにはさっき見たような、住所の書かれた紙。涙が落ちる都度はっきり見える住所は、見る度に全く違うところを指す。懐かしい誰かの筆跡が書いた、全く知らない住所を見つけた時、耐えきれなくなった。
「僕はどこに行けば、皆と、皆とまた、」
 最後まで言う前に、喉に何か詰まって、酷く咳き込んだ。気がつけば酷く寒い。吹雪が所構わず吹き付けている。ようやっと溶けたはずの扉が、またいくつも、幾つも凍りつく。僕も凍えてしまいそうで、掲示板を盾にしながら、身を縮めるしかなかった。
 かつて苦しかった時、皆との他愛ないお喋りが、なんとなく心を温めてくれた。その皆の姿が、今は散り散りになったきり。どこに行ったって、きっと誰かが居ない。
「どこに行けば、皆とまた、楽しいお喋りができるの」
 苦しい。吹雪のせいで息ができない。
 ここは、この鳥は、かつて、方舟だった。ここに来れば、自由に息が吸えた。幸せだった。
 ──それなのに。

《この青い鳥の、乗客たちに告ぐ。》

 舟の、誇りある姿すら、奪われてしまう。
 鳥が沈む。優しい気持ちが込められた柔らかく青い羽が、象徴も特徴もない、無機質な記号に沈んでいく。

「だれか……」

 青い鳥の美しい翼が、カッターの刃のように細く冷たく変わっていく中で、どうにか、手を伸ばした。
 手が、何かを掴んだような、気がした。

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