こんころです。助けてください。
今回は八咫烏シリーズ最新刊『亡霊の烏』の感想を書いていきます。まあふせったー代わりです。
※なんでも許せる人向け。特に翠寛と鶴が音への発言が酷い。今回は澄生もダメかも…。
人物別感想
☆トビ(二代目)
今作の主人公的立ち位置にある人物。『楽園の烏』では地下街の王として、あるいは反乱の首謀者として動いていました。今回は雪斎に捕らえられた彼が、北家の朝宅に向かうところからスタート。(本筋に関わらない序章と爽の話は抜いてます)
作中では雪斎の家族や市柳の母と交流しつつ、裏では反乱分子とも通じていたトビ。彼は賢いので、色々考えながら行動していたわけですね。
で、クライマックスがアレ。救われねぇ…!雪則を抱いていたおかげで酷い目には遭わなそうでしたが、彼が抱いていた考えなどは全て水の泡になりました。それどころか、博陸公なんかよりよっぽどヤバそうな連中が反乱分子という。次回の身の振り方次第では死ぬんじゃないか?トビくん…
☆凪彦
『望月の烏』では澄生のクーデターに与するも、博陸公にしてやられた凪彦。今回はいけるか、と思ったのですが、またしても失敗。そればかりか、宮中で孤立させられてしまいました。ついでにあせびの正体にも気づいた。もう遅いけど。
次回の彼はこのままだと死ぬしかない(後述)のですが、まあそこは鶴が音がどうにかするでしょう。いや普通にあせびオンステージで死んでもらいたい気持ちもありますが、物語的にそうはならなそう。「死んででも凪彦を救う」にはなるかもしれませんが。
☆博陸公雪斎(雪哉)
八咫烏シリーズ二部の山内において凄まじい独裁を敷いてきた彼ですが、ここに来て土台の綻びというか、思わぬ弱点が顕在化してしまいました。
周囲の人間や敵の思惑を利用し、自分の思い通りにする。これまでの雪哉はそのような策で、ありとあらゆる危機を乗り切ってきました。本作でも澄尾さまがその点に触れていますね。
しかし、今回はその癖が最悪の形で作用してしまいました。反乱分子を「猿」とみなしながらも、敵の知性を信じ、それを利用しようとした。見切りをつけるのが遅すぎた。その結果がアレであり、次回の革命なのでしょう。知性なき者の愚かしい行動により、山内で最も賢しい男は殺されるのです。
…なんて言ってみましたが、これは予想なので外れる可能性も全然あります。てか外れろ。やだよ復讐鬼with愚民に殺される主人公とか。
☆治真
二次創作の答え合わせがされた人。Twitterが潤うね。
しかし、話が進めば進むほどもっと早く死ぬ予定だったみたいな話には納得がいってしまいます。極端な話、いなくても話は進みますからね。でもいると読者に潤いを与えてくれる。
☆長束
博陸公に反旗を翻し、弱者でものびのびと生きられる世界を作りたい長束様。『烏主』の頃も(弟のために)自勢力の統制に心を砕いていた彼ですが、今回も膨らみ過ぎた自勢力を制御しきれていない様子。
というか、反乱の主体が長束だけじゃないのもキツいですよね。今回の”動き”にも通じますが、「長束はこう考えていても、澄生には別の考えがある」っていうのは結構ありそう。
そういう意味で、「時間との勝負」という路近の発言はやや気になります。”時間”までに成果を挙げなかった場合、長束の意に沿わないプランBが発動する…なんてパターンは、十分にあり得ますから。(この辺は路近や澄生の項でも話します)
☆路近
相変わらずお元気な路近。『緑羽』を経て性格がかなり丸くなっているようで、長束の理想を好ましいと言ったり、治真の罠にかかった際も大人しく武装解除したりしています。
一方で、示唆的な言動も多々あります。特に248ページの発言はしっかり答え合わせがなされていたもので、同時に今の”長束勢力”の状態も匂わせています。
今の路近にとって、澄生は”変節”してしまった理想論者なわけです。対して、長束様は「まだ甘い」。長束勢力を主体とする反乱分子は、澄生率いる過激派と長束率いる穏健派に分かれていっていたのではないでしょうか。
そして、長束の策は失敗した。これにより、反乱は澄生が仕込んでいた武力蜂起に移行するのでしょう。(この辺は澄生の項で)
☆忍
短編などでちらっと語られていた市柳の母が、ここにきてメインで登場。北家の朝宅に送られ、盛大にふてくされていたトビを再起させます。
時勢に翻弄される姫君か腹黒姫君ばかり描いてきた八咫烏シリーズには珍しい、”暴”の女。最強母ちゃんと言うとわかりやすいでしょうか。とにかく明るく、強い。それでいて知性を感じさせる言葉もかけ、トビに影響を与えていきます。
そんな彼女ですが、終盤では朝宅襲撃を前に何もできませんでした。なんて残酷な展開でしょう。トビを匿う立場っぽいだけに、次回の立ち回りが気になる人ではありますが…物語的には息子にバトンタッチする方が自然かも。あるいは弥栄の雪哉みたく市柳に説教されて立ち直るか。
☆市柳
久々に登場したと思ったら、全てが手遅れだった人。かつては茂丸の死を前に半狂乱に陥る雪哉を喝破し、立ち直らせた市柳ですが、今回ばかりは何もできませんでした。垂氷の深淵にダイブしちゃったわけだし、仕方ない。
しかし、こんな重要な場面に立ち会い、おまけにトビという物語力の塊をも近くに置けるわけですから、次回のキーパーソンの一人は市柳になるかもしれません。がんばえ。
☆澄尾
パパ〜!!!!!💞💞💞💞💞💞
前巻では出番こそあれ、あんまり目立たなかった澄尾さまですが、今回は一家で一パート作ってくれました。元職場の人を追い返す澄尾さまや、身重の妻へのアレな提案を退けようとする澄尾さま、息子を心配する澄尾さまなど、様々な澄尾さまを摂取できます。フヒ…
それはそれとして、次巻のムーブも気になります。一応は反乱側に与しているわけですが、信じて送り出した友人の娘が今や武力蜂起の中心なわけですし。しかも対:元仕事仲間。なんかこう、微妙な心境や立場に置かれそうだなと。
また、雪哉に対するスタンスが「見限られた」なのも気にかかります。まあ部分的には正しいんですが、誤解が重なっているという側面もありますので。茜ちゃんがわかりやすい誤解を晒してるのも考えると、次巻では誤解が解かれる方向になったり…いや、無理か。
☆照尾
こちらも前回は出番が少なめだった、澄尾さまの長男です。素質アリ、とは思っていましたが、想像以上の器量を見せてくれました。在野の変態はあなたを狙っていますよ😻
陽キャモテ男ムーブはもちろん、家族の中での振る舞いや、彼自身の信念(?)みたいなものも見ることができました。いやまあ結局伊達男なわけですが。だがそれがいい。
とても格好良く、明るく、そしてあざといシーンまであります。これは女落とせますわ。そして私も落ちた。
ちなみに、彼と曉美、茜は第二部で新たに作られたわけではなく、構想上は元々いたキャラ…どころか、彼らと澄生に合わせて澄尾さまが作られたらしい。
そうなると、澄尾一家は最終巻の登場も内定と言っていいでしょう。特定キャラのために一家揃えるということは、それだけ重要度が高いわけですから。
…でも、「第二部に向けて作られた」キャラの中には今回死んだ雪稚も入ってるんだよな…不穏…。
☆あせび
キルスコアは伸びませんでしたが、彼女はとんでもないものを殺していきました。息子の心です。
これまでのあせびは、普段の振る舞いや雰囲気に隠れた恐ろしい行為で周囲を震撼させていました。しかし今回は、「楽器の不調を心配する」という、なんとも普通な、しかし状況からすれば致命的にズレた行いで息子にトドメを刺しました。テクニカルキル。
そして傷心の息子に東家の山吹をあてがったわけですが…これ、どうにもきなくさい動きというか、”あせびらしさ”が散りばめられていますよね。
あせびちゃん様、蛍の動きや澄生との関係を朧げながら理解していたのではないでしょうか。そして、それが息子の親離れを促すものだったので、止めた。あり得なくはないルートだと思います。雛人形パーティで鶴が音に釘を刺しに行ったのも、あの女の賢しらぶりに乗せられたら危険だ、とか思ったからじゃ…(流石に穿ちすぎ)(あせびちゃん様はそんなに考えないぞ)
☆鶴が音
北家の忌み子。雪正の台詞はこいつにこそ相応しい。あんな発言をさせておいて今更株上げるだけでは飽き足らず、物語のキーパーソンにまでしようとするとは…と思いましたが、阿部先生は平気でこういうことしますよね。
ともかく、次回の鍵を握るのは間違いなくこの女です。しかも対ラスボス(初代主人公)とかいう胸熱ポジ。いや荷が重すぎるだろ。いくら改心したといってもまだスタート地点なんですよ。そこからクライマックスに???
☆澄生
名前出てる分の犯行が全て本物の澄生(=紫苑の宮)のせいだとすれば、今回最もめちゃくちゃやったのは間違いなく彼女でしょう。ヤバすぎ。
野良絵をばら撒き、それを受けた長束の行動が失敗したかと思えば、終章では武力蜂起にまで走ってしまいました。今最もエキサイティングな女。
さて、ここで彼女の思惑を問い直してみましょう。元はと言えば、澄生は民衆を虐げる体制を糺すべく、朝廷に出仕していたわけですが…もっと遡った時、果たして彼女の目的はそんな生ぬるいものと言えるでしょうか。
紫苑の宮は、「私は戦う」と言い続けていました。それに対して長束は「あなたが一人で戦えるようにする」と言ってくれましたし、澄生として帰ってきた際も「戦う」ことを目的としていたわけです。
では、それは何のためか。該当の発言は、紫苑の宮が次代の金烏という立場を追われかけ、浜木綿が朝廷の制圧を図った際のもの。つまり、彼女にとっての「戦う」とは、王位を取り戻すことでしかあり得ないわけです。
そりゃ、奈月彦の理想を実現するという目的もあるでしょう。ですが、彼女にとってそれはあくまでサブプランか建前、あるいは”後で考える”程度のことなのではないでしょうか。
ともかく、澄生は博陸公をぶっ倒し、自身が王座に帰ることを主目的としていた可能性が高いです。そのためなら、民間の者も平気で利用する。最後に白々しく嘆いて見せれば、周囲は簡単に騙されてくれますしね。凪彦みたいに。
このあたりが、「犠牲が出ないこと」をも理想とする長束との違いだと思います。緑羽の時点から、彼らの断絶は変わっていないのです。
そして長束の策が失敗した以上、澄生による朝廷の武力制圧はもはや避けられないものになってしまった。長束の「時間との勝負」は、澄生に見限られるまでの勝負だったのかもしれません。
…というのが私の予想。しかし、紫苑の宮がこんなカスだったら嫌すぎるので予想を裏切ってほしいところ。しかも予想通りな場合、凪彦は多分死ぬので…(終章の演説に「金烏代」の話が入っていないため。このままだとママに囚われたまま黄烏の共謀者、貴族社会の象徴として死にかねない…)
とはいえ、ここまでの予想では解決できない点もあります。それは、”変節”。澄生ちゃんは最初からアレなので、変節したとは言い難いんですよね。他の人はともかく、路近がそれを見抜けないとも思えない。
なら、変節したのは誰なのか…?
「雪哉はそなたのそれを甘さだと言った。実際そうだろう。そなたは甘いし、現実は厳しい。だが、私はその甘さが通用する世界の方が望ましいと思っている」
────阿部智里『烏の緑羽』より
☆翠寛
翠寛推しならまずしない予想だと思いますが、真に”変節”したのは多分こいつです。まあ露骨に性格が変わったわけではないでしょうが。信念を「折られた」みたいな言い訳は全然しそうじゃないですか?
さて、上に引用した『烏の緑羽』で、奈月彦は翠寛に対し、上記の台詞を持って「山内をどう導くか」という命題に対する一つのビジョンを提示していました。同時に、翠寛には長束との橋渡しをしてほしいと。
「翠寛には、やってたまるかという意思がある」。奈月彦はこうも言っていました。実際、『緑羽』や『弥栄』を見ても、彼の思想は「人死にを出さない」「殺さない」で一貫していることがわかります。
では、そんな翠寛が変節したのは何故か。まあシンプルに、長束などが言っていた通りなのでしょう。雪斎は下々の嘆願を握りつぶし、(脅しとはいえ)交渉を破り、朝廷に送り込んだ紫苑の宮をも叩き出した。そこに今回の長束潰しと北家朝宅襲撃事件が入り、万策尽きたんでしょうね。
恐らく、翠寛は元から(澄生の提案もあったかな)武装蜂起のプランを用意していたんだと思います。その上で、やりたくないので後回しにしていた。地下街に根回ししていたのも澄生の在職中と割と遅めなので、可能なら内部から体制を破壊したかったのでしょう。でも無理だったし、引くに引けない状況になった。
どこまでも民衆の生活を踏み躙り、自浄作用を徹底的に潰した貴族たちと、間違いを正さず、博陸公を真の独裁者にしてしまった反乱勢力。両者はついに、戻れないところまで来てしまったのです。
はい。以上で人物編は一旦終了とします。ちょっとね。長すぎるからね。次回があれば事象編になると思います。
追伸:予想部分は露悪的すぎるので大体外れてるはず。特に澄生と翠寛については予想が結構ブレブレ。澄生の本心を測りかねてるんですよね。
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