『トラペジウム』を読む

こんころでーす。

本日のブログはこちら、最近映画化もされた小説『トラペジウム』についてダラダラと語っていきます。本当なら映画にも手を出したいくらいですが、そんな時間は多分無い。悲しいね。

アイドルの小説、その上作者の知名度ゴリ押しPRが展開されているなど、一見すると話にならないレベルの駄作なんじゃないかと不安になる本作。しかし、私から見るとまあまあ面白いものでした。特に最初の引き込みが上手い。創作において重要なのは初手の一撃と週刊少年ジャ○プにも書いてありますからね。この鉄則を外さないのは才能ある作家の証です。多分。

さて、そこそこ面白いのは前提とした上で、本作を読み解いていきましょう。ここからは小説のネタバレが始まりますので、まだ読んでない方は読んでみてね。それか映画。

おしながき

1.ストーリー

アイドルを目指す主人公「東ゆう」は、「東西南北の高校から美少女を集め、アイドルユニットを結成しよう」という計画を立てる。南のお嬢様、西のメカニックロリ、北の幼馴染()を集め、その過程で協力者まで得るなど、計画は順調なように見えたが…?

というのが大体のあらすじ。ちなみに「東西南北」というテーマに合わせた理由はあんまり語られません。まあここは薄っぺらくてもいいからね。主人公の苗字からして東だし。

ストーリーですが、小さめの文庫本一冊で完結するだけあり、展開はかなり早いです。…ただ、素人だから展開が早くなった、みたいな理由ではないと思われます。というのもこの小説、物語が主人公の一人称視点のまま進んでいくんですよね。

2.東ゆう

主人公の東ゆうは、アイドルを目指す女子高生。…ここまではいいんですが、問題はここから。

この女、良くも悪くもアイドルになることしか考えていません。そのために必要なステップは踏むけど、それ自体には何の興味も感慨もない、という感じ。自分が集めた西南北の少女たちすら、「南」というような記号でしか扱っていません。

神がかり的な運により、少女たちの召集自体はうまくいくのですが…先述の良くない面が災いし、四人揃った後の彼女はどこか一人浮いてしまいます。

そりゃそうなんですよね。ちゃんとした善意で繋がりあっている他のメンバーと違い、主人公は他のメンバーを「アイドル」としてしか見ていない。彼女だけが、人間関係をビジネスライクに扱っている。浮くのは無理もない話です。

先述した「展開の早さ」にも、彼女のこうした気質が良く現れているといえます。東ゆうにとって、作中の出来事の9割は「踏み台」でしかない。なので描写が極端に少ないんですね。アイドル活動のために始めたボランティアも都合が悪くなれば次から次へと切り捨てますし。この辺の描写は見ていて良質なモヤモヤが溜まってきます。不健全な面白さ。だがそれがいい。

3.総評

簡潔に言えば、クズのサクセス(?)ストーリーをクズ視点で見せられてる感じ。しかしこのクズ、なかなか良い出汁が取れるのでおすすめです。リアルにいそうな感じなのも良い。

唯一残念なのは終盤と改心パートですかね。特に終盤、一旦折れてからアイドルになるところはややご都合主義な気がします。

そして改心パート。ここが作品のキモなのかな、とは思いますが、サクサクやってしまうのでインパクトがあまり無い。東ゆうがこれまで積み上げてきた実績をひっくり返すには、やや足りません。作品の主題でもあるはずなのに、全然物足りない。

…とまあ、残念な部分はあるのですが、それでもまあまあ面白い作品だとは思います。特に好きなのは主人公の西ちゃんに対する扱い。本当に全てが酷い。普通の創作なら「ツッコミ待ちか???」となるレベル。これが花開くシーンはキャッキャしながら読んでましたね(←カス)。

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