今日は皆さん、バレンタインデーですよね。
明日、逆バレンタインできるように頑張ります。
───町田樹 ソチ五輪SP後インタビューより抜粋
こんころです。ソチ五輪の時はバレンタイン翌日がFSだったようですが、今回はなんとFS当日がバレンタイン。果たしていくつのチョコ(会心の演技)が貰えるか、スケオタの皆様もソワソワしていたことでしょう。そんなFSの新鮮な感想を、お届けしていきます。
…と思ったんですが、蓋を開けてみれば血のバレンタイン、惨劇が広がっていました。後半になるにつれ真相が明かされていくサスペンスみたいな感想になりそう…
まあ血のバレンタイン化したのは上位も上位だけなので、序盤から中盤は安心して読めます。基本はいい結果の人をピックアップしてますし。
※SPはNHKプラスに、FSはTVerに見逃し配信あり。日本語解説を選ぶと町田准教授の解説になります。
1.三浦佳生(日本) FS170.11 総合246.88 13位
今季の四大陸王者、三浦佳生選手。SPはジャンプがあまり上手くいかず、22位という危うい結果に。靴が壊れかけという状態であり、FSも当日の公式練習までかなり不安定で、スケオタ間にも不安が広がっていました。
迎えたFS。冒頭の4Loを鮮やかに決めておよそ全ての不安を振り払うと、4T+3T、4Tをやや堪えながらも決め、後半の3A+1Eu+3Fという難しいコンビネーションも見事着氷。自身最高難度のプログラムを、果敢に滑り切りました。演技後にはガッツポーズも飛び出します。4Sの転倒?なんですかそれ。
FSの得点は170.11。耐えるジャンプが多かったからか、技術要素に注力しすぎていると見られたからか、演技構成点はやや低めでしたが、技術点は90点台の大台に乗せてきました。
2.ルーカス・ブリッチギー(スイス) FS165.77 総合246.64 14位
欧州選手権優勝の経験もあるブリッチギー選手。オリエントをテーマにした今季のFSですが調子が悪く、データの町田によれば「成功率0%」のジャンプが二つ。
町田教授がそれを指摘するたびに私は「なんか意地悪やなぁ」とサナ活していたわけですが、なんとこの二つのジャンプ、しっかり決まりました。それを含め、前半に配置された大技は全て成功。ヨーロッパトップレベルのその実力を見せつけていきます。
しかし後半二つのトリプルジャンプがことごとく抜けてしまい、暫定順位は三浦選手に次ぐ2位に。
3.ニカ・エガゼ(ジョージア) FS175.16 総合260.27 10位
ジョージアのエガちゃんこと今季の欧州選手権王者、エガゼ選手。
(欧州選手権はヨーロッパの選手のみが参加できる大会。ヨーロッパ以外の選手の大会である四大陸選手権とは対をなすポジションですが、四大陸選手権が最新の大会なのに対し、欧州選手権は最古の権威ある大会です。)
冒頭の4Lzこそ転倒しましたが、そこからの4回転は全て決めて立て直し、曲の盛り上がりに合わせた腰フリフリ面白ダンスも披露。
最初のジャンプこそ転倒したものの、残り4つの4回転と栄光の腰フリフリを決めたのは大きく、暫定順位は1位に。
ピョートル・グメンニク(AIN) FS184.49 総合271.21 6位
建前上は中立なAIN代表、グメンニク選手。
FSは「オネーギン」というロシア歌劇。ある貴族の青年が失恋するまでの過程を叙情的に演じながら、4F、4Lz、4Lo、4S+2A+2Aなどの大技をガンガン決めていきました。最後の3Lz+3Loこそ解けて3Lz+2Loになりましたが、それでも技術点速報値は120点台の化け物構成。
複数の回転不足が祟り、技術点は速報値から大きく引かれてしまいましたが、それでも100点台の大台には乗せてきました。
余談:今のフィギュアスケートにはリーダーズチェアっていう仕様があるんですが、これは現在一位の選手がリングサイド(キスアンドクライの横)に座り、今滑っている選手を見守るというもの。
で、グメンニク選手は当然暫定一位。次の滑走はウクライナのマルサック選手。結果、滑走中のウクライナの選手とリーダーズチェアのAIN選手が同時に映ることになってしまったようです。
リーダーズチェア自体は、グリーンルーム(上位3選手待機)にウクライナ選手とAIN選手が同時に入るのを防ぐための措置だったのかなとも思いましたが…滑走順が並んだ結果、もっと酷い結果になってしまいました。てか2位、3位の椅子もあったのでもっと最悪。いや2位3位の椅子があるのはいいんですけど昨日の結果を踏まえて並ぶ可能性とか考えなかったんかなという(略
戦争被害者たるウクライナ選手の主張を封じた挙句、ほぼ配信で見ているであろうウクライナの観衆にこんな映像をお届けしてしまうのは…ちょっとまずすぎるというか、これで平和の祭典は名乗れませんよね。
スティーブン・ゴゴレフ(カナダ) FS186.37 総合273.78 5位
ジュニア時代に活躍した一方、成長に伴って苦しいキャリアが続いていたゴゴレフ選手。昨シーズンは世界選手権にて自国の五輪出場枠を1に減らしてしまい、更に今シーズンに入ってからはカナダの有名選手、キーガン・メッシング氏の復帰も重なり、一時は五輪出場も危ぶまれていました。
しかし、結果として今シーズンは飛躍の年になったと言えるでしょう。五輪にはご覧の通りしっかり出場、それどころかFSだけなら2位の好成績を収めたのですから。しかも団体戦から4連戦で全部いい結果という。
FSは日本ではお馴染み、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」。日本人に馴染み深いのは浅田真央さんが使用した第一楽章ですが、このプログラムでは静かな第二楽章から使用、クライマックスに盛り上がる第一楽章を配置しています。
大技たる4回転3本を決めると、流れに乗って他のジャンプも概ね着氷。スケートも音に合わせてよく滑っていて、ハイスコアも納得の質がありました。
佐藤駿(日本) FS186.20 総合274.90 3位
今シーズン、FSは圧倒的な安定感を保ってきた佐藤選手。自信のあるプログラムで、逆転を狙っていきました。
エッジエラーの心配がある4Fは回避し、いつも通りの手堅い構成に。4Lzで最高とはいかないものの高い加点を引き出すと、そこからの4回転も軽やかに決めていきました。
一方、全日本選手権同様に3Lzで僅かな乱れ。スピン・ステップもレベルの取りこぼしが発生するなど、完璧とはいきませんでした。それでも180点台後半のハイスコアをマークし、最終的には銅メダル。今期の躍進、その集大成を示しました。
ケヴィン・エイモズ(フランス) FS167.30 総合259.94 11位
FSを後半グループで迎えたエイモズ選手。FSの「ボレロ」は2023~2024シーズンのプログラムで、好評を博しながらもシーズン後半の演技内容は振るわなかったという経緯があります。
そんなFS。冒頭のジャンプは抜けてしまい、あわや悪夢の再来かとも思われましたが、2本目の4Tはしっかり着氷。そこからも多少の乱れはありましたが、崩れ切ることなく演技をまとめ上げ、終盤の盛り上がりに持っていくことができました。
チャ・ジュンファン(韓国) FS181,20 総合273.92 4位
2023年の世界選手権で銀メダルを獲得したほか、2025年の冬季アジア大会では鍵山選手を抑えて勝ったこともあるジュンファン選手。金メダルを獲得し、ついでに兵役免除権も得た珠玉のプログラムをもって、五輪のメダルを狙いました。
最初の4Sを華麗に着氷。続く4Tではフェンスに激突する手痛い転倒がありましたが、続けざまの3Lz+3Loを鮮やかに決めると、一気に巻き返していきました。
結果的には4Tの転倒、そして2本目の3Aの僅かな回転不足が痛手となってしまいましたが、プログラムとしては五輪の舞台に残すに相応しいものを演じられたのではないでしょうか。
ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン) FS198.64 総合291.58 1位
昨シーズンは3A+1Eu+4Sという、サードジャンプに4回転を持ってくる史上初のコンビネーションを引っ提げて躍進、世界選手権の銀メダルを取るまでに至ったシャイドロフ選手。
今シーズンはグランプリファイナルまでは進んだものの、思わぬ回転不足判定などに精神的にも苦しみがあったのか、成績が伸び悩み燻る時期が続いていました。
SP5位で迎えたFS。カザフスタン出身の歌手の曲を使います。冒頭で先述の3A+1Eu+4Sを決めると、回転不足に苦しんでいた4Lzこそ乱れますが、その後の4回転3本は落ち着いて決めていきました。
特に、前半最後のジャンプとなる4Fは予告なしに投入。入りもトリプルジャンプと変わりない自然さで、サプライズ要素となっていました。
昨シーズンはイカれてた荒削りだったステップや表現の部分でもしっかりと魅せていき、FS200点、総合300点に迫る得点をマーク。当然、暫定1位につけました。

去年(↑)月光take on meやってた人とは思えない…と思ったけど今年もなんか後ろにくっついてたな、気のせいかな、フィフス・エレメントが聞こえたの…
その後、SP4位のグラスル選手は僅かな乱れが相次いで失速、SP3位のアダム選手は冒頭の4Lzで転倒し、中盤の4Sでも着氷が乱れたのが決定打となり、完全に失速。
SP2位の鍵山選手を迎えた時点で、シャイドロフ選手のメダルは確定。あとは色だけ。最終結果は、残り2名の感想の後に話します。まあ書いてるし引用もしたし佐藤選手のところではちょっとだけ言っちゃってるけど。
鍵山優真(日本) FS176.99 総合280.06 2位
SPでは3Aのステップアウトを除き、究極の仕上がりを見せて2位につけた鍵山選手。FSでは初公開の衣装、初投入の4Fを携え、(成功すれば)自身最高難度の構成に挑戦しました。
しかし、冒頭の4Sで着氷の乱れが発生。難しい心理状態で挑んだ4Fは、回転こそ回り切ったものの着氷時に堪えきれず転倒。3連続ジャンプもサードジャンプが抜けて2Sになりました。
更に後半の4回転も着氷が乱れてしまい、結果として4回転の成功数はほぼ0。加点と演技構成点で戦う鍵山選手には、手痛いミスが重なりました。
それでも3Aは2本とも高い質で実施し、3F+3Loの難しいコンビネーションではやや苦しい着氷ながらもなんとか加点を引き出しました。更にスピン・ステップは全てレベル4。
ChSqに入る直前で躓くなど、見た目としてもあまり良くない仕上がりにはなってしまいましたが、それでも最低ラインはなんとか守り切り、SPのリードも保ってメダル圏内の順位を確保しました(暫定2位)。
まあ、高橋大輔さんや宇野昌磨さんのように五輪銅メダルから世界選手権で金メダルを取った選手もいますし、浅田真央さんだって五輪の不本意なミスをバネに世界選手権で完璧な演技を見せてくれました。鍵山選手も、世界選手権では良い演技を見せてくれるはず。まあFSはイタリアに極振りしたプログラムだからそこは取り返せないんですが…
と、思っていたんです。少なくとも、鍵山選手の演技を見た時点では彼が銅メダルだと思ってました。
イリア・マリニン(アメリカ)
冒頭、マリニン選手自身が吹き込む印象的なナレーションから始まります。
真の叡智とは、自分が何も知らないと知ることである。
失われているものは、未知の中にある。
嵐を、受け入れるんだ。
───イリア・マリニンFS「A Voice」冒頭ナレーション和訳(五輪公式HPより引用)
4Fから始まるプログラム。そこから4A、4Lz、4Loと、マリニン選手を正真正銘の「クワドゴッド」に押し上げた4回転ジャンプが続きます。
昨シーズンからほとんどミスのない4Fは今回も軽々着氷。続く代名詞4Aは緊張があったのか抜けてしまいましたが、マリニン選手もう一つの代名詞たる4Lzは問題なく着氷。そのまま、マリニン選手にとっては最難関とも言える4Loへと進んでいきます。
しかし、この4Loも抜けてしまいました。マリニン選手が4回転を抜く場合、選ぶのは体力を持っていかれる4Aと、技術的に難しく抜けやすい4Lo。ですから、4Aが抜けた時点で4Loを抜く選択肢が過ぎり、思考が安定しなかった可能性はあります。
結果的には、この4Lo抜けが決定打だったのでしょう。StSqでも珍しくレベルを落とし、そのまま後半に突入。4Lzを転倒してしまいました。
マリニン選手のコンビネーションジャンプは全て後半。つまり、リカバリーが効きません。それでも取れる基礎点はもぎ取ろうと、続く4T+3Tを4T+1Eu+3Fに変更。実は団体戦FSでも使っていたこのリカバリージャンプをしっかりと決め、加点も取りました。
しかし、もはや流れは変えられず。最後の4S+3Aでファーストジャンプの4Sが抜けて2Sになり、更に転倒。その後のスピンやChSqは振り付けを抜きながらも決めていきましたが、技術点は80点にも満たず。マリニン選手からすればかつてないほどの低得点で、FSを終えました。
FS156.33 総合264.49 8位
こちらがマリニン選手の得点。正直、言葉がありません。SPではやや様子見な演技とはいえ108点をもぎ取って1位。公式練習にも不安要素はほぼなく、何よりここ2シーズンは負けなしの選手。オリンピックでも得点はどうあれ1位か2位にはなるだろうと思っていました。それが、こんな結果になるとは。
まあ、大丈夫です。今回は残念でしたが、マリニン選手はまだ初五輪。競技年齢を考慮しても、次回五輪には十分出られる範囲です。4年後に期待しましょう。
FS「A Voice」中盤には、こんなナレーションが入ります。(五輪公式HPより引用)
過去は鎖ではなく、一本の糸。
その糸を手繰れば、やがてあなたを帰るべき場所へと導くだろう。
光の届かぬ場所から、まだ誰も踏み入れたことのない道を切り拓け。
イリア・マリニン選手の競技人生は、まだ半ば。ここで伝説を生むのではなく、ここから伝説が始まると解釈しましょう。過去とは五輪のリンクであり、光なき絶望の中で得た経験に立ち返ることで、彼は新たな伝説を生むのです。
来季には5回転ジャンプを見せられるかも、という発言もありますし、マリニン選手のこれからの活躍にも目が離せません。
まじでそうとでも思わないと受け入れられない…
まとめ
1位シャイドロフ選手、2位鍵山選手、3位佐藤選手。金メダル争いこそほろ苦い動きがありましたが、ともあれシャイドロフ選手はめでたくカザフスタンの五輪史に名を刻んだわけですね。シーズン序盤の苦しみから、よくここまで4回転を戻してきたものです。というかむしろ成長してる。
佐藤選手もめでたい。勝つ努力を最後まで止めなかった上で、冷静でい続けられた結果でしょう。
鍵山選手は残念でしたが、あれだけ崩れてもスピン・ステップを演じきり、演技全体の流れを淀ませなかったのは流石だと思います。やはり表彰台から落ちないだけの力がありますよね。
三浦選手は靴のアクシデントが残念でしたが、それでも五輪出場枠を勝ち取った者としての矜持・覚悟をFSとして結果に出せたのは良かったなと思います。納得できるだけの結果が僅かでもあるか皆無かでは、メンタルの持ち方が全く変わってきますからね。
こんな感じで優勝者と日本代表について振り返ったところで、今回はおしまい。1ヶ月後の世界選手権と4年後の五輪に期待しつつ、〆とさせていただきます。
おまけ
さて、この記事のタイトルはバレンタインデーに開催される男子競技の感想ということで「逆バレンタイン」となっていますが、ここで私はふと思いました。
これは順バレンタインであり、五輪の魔物(女)がチョコをよこしてきやがったのだと。
しかも本命チョコ(えげつない大崩れ)を少なくとも2つ渡してるんですよ。浮気者がよ。次回五輪でストーカーしてこないように逮捕する必要がありそうです。


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