[読書]皇后の碧

Q:この後宮に、心を許してはならない─────?

 

正解:✖️。どんな場所であれ、阿部智里鬼悪魔先生が描いている限り心を許してはいけないため。

 

こんころです。今日も今日とて新刊を買う。まだ読み終わってない本が山ほどあるのにね!ガハハ!(←読めや)

今夜私がいただくのは、『八咫烏シリーズ』でお馴染み、阿部智里先生の新作『皇后の碧』。帯紙のあらすじを見たところ、なんと風の精霊を統べる王様がいるらしい。なんてタイムリーな…(ヒント:鳩舎)

ネタバレ要素を極力抑えた感想としては、「原点回帰」だなぁという感じ。作者のデビュー作(烏単)に近い、美しい後宮と謎解き要素の複合になっています。ただ、今回はファンタジーが強め。魔法(に近い概念)とか出てくる。

 

※ここから先、超ネタバレです。「皇后の碧」を読んでから進んでね。

 

 

まずは一言。

すいませんでした(土下座)

阿部先生の作品は八咫烏シリーズしか読んでいないので、どうせ今回もバドエンだったりその兆しが見えたりするんだろうなと思ってました。でも全然ハピエンだった。

なんならシリーズものでもないかも。八咫烏が終わるから次のシリーズ書くのかな?と思ったけど全然単巻で成立する内容だった。

 

 

キャラクター

ナオミ

本作の主人公で、火竜による村焼きに遭い、鳥の王様であるノアに拾われた少女。聡明で行動力も兼ね備えた女官に育ち、「蜻蛉帝」シリウスに見初められ、彼の妾候補となります。

あせび様や雪哉と違い、重大な仕込みは0の主人公。前者二人に近い隠し設定はあるけど、そんなに重要じゃない上にわかりやすいです。少なくとも、現行でバケモンになってる八咫烏主人公sとは全然違います。

ただ性格はちょっと悪い。序盤で自白してきた性格の悪さは、終盤になってしっかり輝きます。

ノア

「孔雀王」こと、鳥の王様。今作における「風の精霊」は大きく分けて鳥と蟲の二種類なわけですが、鳥の方の支配者が彼というわけですね。

しかし蜻蛉帝に絡まれ、敗北。おまけに一度ならず二度までも大事な少女を奪われ…というのは建前でしたが、一度ならず二度までも意趣返しを受けました。建前の裏でやってることは割とドス黒い悪なんですが、最終的には憎めない位置に着地します。

本作の鳥さんはこいつも含め全員が悪役なのですが、過去の所業(虫さん攫って手元で愛でる)に関しては無自覚らしい。一億総あせび様社会ということですね。風繋がりでオーロラも呼んで無自覚ヴィランパーティーをしましょうか(やめろ)。

アダ

ノアの腹心にして、蜻蛉帝の妾になったナオミの女官。ナオミがノアの女官だった頃は彼女の指導者でもありました。

そんなアダさんですが、今作に数多いる「復讐者(正確には、復讐の資格を持つ者)」の一人。彼女は蜻蛉帝の侵攻により両親を失っており、その復讐も兼ねてかノアの作戦に乗ります。

しかし、彼女が皇后イリスの生存を認めなかったために作戦は失敗。これに関しては事情を鑑みるとマジで仕方ないんですが、「復讐心や憎しみに囚われてもいいことないよ」ということなのかもしれません。じゃあ今の雪斎アカンやん…いや澄生も大概だけど

二代目蜻蛉帝(皇后イリス)

「蜻蛉帝」でまとめて書くには両者が持つ物語力がデカすぎるため、イリスとシリウスで分けて書きます。まずはイリスから。

孔雀王の妻であり、後に和平の証として蜻蛉帝の妻になった蜂の精霊。ここまでは本当なのですが、残りの作中情報はちょっとややこしめ。

真実だけ書いちゃうと、寝取られた後に蜻蛉帝を殺し帝座を寝取り、そのことをひた隠しにしながら蜻蛉帝を演じつつ、自分の偽物も作って状況を誤魔化していました。あと正体バレた時用に蜻蛉帝の精子使って兵士産んでた。

ノアやアダは「イリスが死んだか否か」しか考えていませんでしたが、実際の状況はその遥か上をいっていたんですね。

終盤になってようやく正体を開示し、二代目蜻蛉帝としてふるまうことになりました。つまり巣の宮は百合の園ってワケ。

フレイヤ

蜻蛉帝の妾の一人である、火の精霊。本作における火の精霊は火竜も含め強欲な悪者として描かれ、フレイヤも例外扱いとはいえその一人であるため、ナオミからは疑いの目を向けられます。

しかし、終盤には窮地に陥ったナオミを助けに颯爽と登場。いかにも信用してはいけないキャラとして登場しつつ、終盤に助けに来る。マイルド路近といったところでしょうか(繋げすぎでは)(だって手癖が…)。

ティア

かわいい。(※蜻蛉帝の妾の一人で、水の精霊)

続編があったら何かの拍子に死んじゃいそうで嫌。しなないで。

土の精霊s

巌のような肉体!筋骨隆々!精悍!雄々しい種族〜💞💞💞

などと期待していましたが、死ぬお父さんか、ナオミを手酷く裏切る奴らしかいない。酷すぎる。こんなに私好みの描写が多いのにもったいない。

やはり私は澄尾さまと照尾(とお亡くなりの茂丸)を擦り続けるしかないらしいことがわかりました。悲しいね。路近?そういう方向で擦るには緑羽のダメージがね…

初代蜻蛉帝(シリウス)

お前さあ!!!!!!!(大絶叫)

本編中では死んでおり、暴君だったことしかわからなかった蜻蛉帝ですが、その生前を描く終章でいきなり描写を盛られた上に決して叶わないカプを成立させやがりました。なんだこいつ。

結論から言うとジョウのことが大好き。ふざけやがって。でもこの話はこれでおしまいなんだ。てかジョウもジョウでクソデカ矢印向けてるっぽいのなんなんだよ。

ジョウ

お前さぁ!!!!!!!(Part2)

ナオミ付きの侍従みたいな役回りを担う宦官長。甲虫の精霊でしたが、戦いを早々に諦めて宦官になった変わり者にして切れ者。

作中では好感度を上げ下げしてナオミを翻弄しますが、実際のところはちゃんと一貫した態度を取っているのですごい。正論しか言わないけど常に優しさがある。

そんな彼ですが、終章で蜻蛉帝とのクソデカ矢印が発覚。しかも瞳は蜻蛉帝好みの緑色。だからしわくちゃにして隠す必要があったんですね。

イリスとはしっかり秘密を共有している彼ですが、蜻蛉帝が交代した時、あるいはイリスと協力関係になった時、どんな気持ちだったのでしょう。イリスやティアが蜻蛉帝からの矢印を理解していた以上、彼もその心を理解していた可能性は高いですし。

 

ストーリー

前述の通り、烏単に似たファンタジー後宮ミステリーという感じ。ただ、世界観が洋風なので全体的にバチバチキラキラしている。ほぼ毎ページ宝石が出てくる。本読んでるだけなのに目が潰れそう。

展開は阿部先生らしいどんでん返しの連続になっています。ジョウ、イリス、蜻蛉帝あたりは特に。ただし、アダは話の進行とともに緩やかに闇落ちするため、どんでん返し感は特にない。あと全体的に親切で、大きい謎以外はサクッと開示してくれたりする。

 

おまけ

フォロワー…フォロワー…聞こえますか…

皇后の碧がアヴァロンルフェに似ているのではありません…アヴァロンルフェ(の一部)が阿部智里っぽい展開なのです…(多分)

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