自分を大切にしよう!

「自分を大切にしよう!」

 そんなの口で言うのは簡単だが、実際やってみると難しい。そもそも私は、腹が立ったら八つ当たりがしたくて堪らないタイプで、その癖、他人や物に八つ当たりしてはいけないという最低限の道徳感はあるものだから、八つ当たりの矛先が自分に向く(最低!)。そんなだから、自分を大切にするどころか、自分を許すことすらできない。常に自分が憎くて堪らないし、事あるごとに「さっさと死んでしまえ」と呪う。そんなことばかりしていたら鬱になった。(いや、正確には「うつ」ではなく「抑うつ」である。詳しくない人は「抑うつ」状態がうつ病の主たる症状で、それが長期間に及ぶとうつ病という診断が下りる、と思っていただければ良い)

仕事や人生そのものを休んでいる間に、一番言われたことは「自分を大切に」である。耳にタコができてしまうほど言われた。その度に、「できてたら苦労してないわ!」と心の中でつっこんでいたし、「自分すら大切にできない人が人に愛されようなんていきすぎた願いなのだ、やっぱり死んだ方がいい」という思考に陥って落ち込んでいた。しかし休んでいる間中、この忌々しい「自分を大切にする」という単語に嫌でも向き合う羽目になる。

休んでいる間は本当に何もしなかった。自分に課した約束はほとんどないし、基本的に一日中ベッドの上で、ゲームをしたり自分を殴ったり、責めたり、綿(ぬいぐるみ)と戯れたりしていた。強いて言うなら、出来るだけ三食食べることと起きる時間だけはできるだけ守るようにした。
まず、三食食べるのは実家暮らしのまろエッティなので結構簡単だった。母は律儀な優しい人で、仕事もせず寝ているだけの人にも三食用意してくれるし、よほど起き上がれないとか、吐き気がひどい時以外は食欲がなくても二口三口くらいだけでも食べるようにした。
次に、起きる時間。これは仕事のある平日と同じ時間に起きるということだが、実はかなり緩い。6時にアラームをかけていたが、6時にアラームをかけてしんどかったら寝ても良いし、元気だけど起き上がれなかったらゲームをする、もっと元気だったら朝ごはんを食べ、ものすごく元気であれば散歩に出かける。基本的には朝ごはんを食べてベッドで横になるか、ベッドでゲームをする日がほとんどだった。とはいえ、休みでも決まった時間に起きれた、というのはそれなり自信になった。
結局、休みの間はものすごく調子が良い時は外出したし、基本は家の中でゴロゴロしていた。その間もずっと休んでいる自分に後ろめたさを感じていたし、事あるごとに自分へ暴言を吐いていた。が、案外これが思ったほど落ち込まないのである。前は常に罵詈雑言の嵐で、その上ネガティブな思考から数日抜け出せなくなっていたが、休んでからはご飯を食べるだとかお菓子を食べるだとかトイレに行くだとか、そういう行動でスルッと抜け出せるようになった。どんなに酷くても一晩寝たら平気になった。宵越しの鬱は持たない。何とも弱そうなロックンローラーである。

執筆現在、からまーろは午前中のみの勤務にさせてもらっている。早く帰ってこれる分、風呂に早く入れるし自分の時間もたっぷりある。また、どうせ午前中で帰らなければならないのだから、翌日に仕事を持ち越すのに躊躇いがなくなった。今も、そこまで自分に課していることはない。しかし意識的に「自分を大切にする」ことを始めた。この裏切り者!そう思った人ももう少し読んでほしい。やってることは至ってシンプルなのだ。
しかし自分を罵る思考、これはまだやってる。正直、自分に暴言を吐くことをストレス解消法にして10年以上経つからすぐ変えるのは難しい。今でも「死んでしまえ」と呪うこともあるし、「社会のクズ」だの「存在しない方がいい」だの、他人には言ってはいけない罵詈雑言で渦巻いている。

じゃあ何をしているのか? 身なりを整えるようにした。
身なりを整える、という言い方をするとその前は全く不潔で公衆衛生の敵だった、と勘違いされるかもしれない。いくら何でも、それは不本意なので断っておくが、最低でも人と会う前日は必ずお風呂に入っていたし、人と会う直前には歯を磨いていた。化粧や着飾ることは前からそこそこ好きだから鬱でもやっている。これに少しだけ行動を足すことにしてみた。
まず、髪の毛の手入れ。今は平日5日は仕事をしているのでほとんど毎日お風呂に入っている。そこでお風呂時間にコンディショナーを馴染ませる時間を作った。馴染ませる時間は気分が乗れば全身をボディーソープで洗うし、そういう気分でなければ防水カバーに入れたスマホでTwitterを見ている。お風呂から上がったらヘアオイルを付けて、それからドライヤーで髪の毛をちゃんと乾かすようにした。熱風で乾かした後は、冷風モードに切り替えて仕上げる。
次に、肌の手入れ。今まで適当に使っていた乳液から、美容ジェルとワセリンに分けることにした。まず化粧水をいつも通りした後、化粧水を重ね塗りをする。乾燥肌から来る油性肌なのでニキビができているところを重点的に染み込ませる。それからジェルでじんわりと肌に馴染ませる。最後、肌がひんやりしっとりしたらワセリンで適当に保湿する。
これだけだ。
中には鬱でも毎日やってる人があるかもしれないが、私にとっては相当な進歩である。髪の毛なんて自然乾燥だったし、ボディーソープで洗うのも1週間に一回かそれ以下の体たらく。化粧水はつけ忘れてTwitterをしてる時もあったし、乳液なんて減ってきたら使うのがもったいないからと使わなかったり。そんな人がほぼ毎日これをやってるのだから、自分でもびっくりしている。いつまで続くか分からないが、なんだか「自分を大切にする」をできているようで嬉しい。大衆の価値観に迎合している自分は好きではないが、気分は悪くない。もちろん今でも自分のことは大嫌いだが、自分の髪と肌は大切にしている。そう思うと、何だか意地張って自分を嫌うのも馬鹿馬鹿しくなってきた。

徐々に良くなったり悪くなったりを繰り返しながら鬱になる前に戻っていると思う。完全に戻ることはもう無いだろうが、少なくとも今は調子が良い。それくらいで良いのだ、と最近思うようになった。結局、先のことなんか考えても意味がないし、自分が生きているのは今である。過去でも未来でもない。そんな余計なこと考えなくて良いのだ。めんどくさいし。

当該記事で「自分を大切にする」の例に挙げたことができていないからあなたがダメということは絶対にない。この世に絶対はないとか言う者もいるが、これだけは本当に絶対ない。もし、そうやってあなたを蔑ろにする人がいれば、今から一緒に、これから一緒に殴りに行こう。
もし、「自分を大切にしてやっても良い」と思った人はできる範囲で自分が苦にならない行動を足してみてほしい。できたら身体的or精神的に世間一般で「自分を大事にする」ことで。三食食べるとか、朝決まった時間に起きるとか、出かける時は化粧をするとか、寝る前に本を数行読むとか、自分の好きなことで良いと思う。決して、それができなかったからといって、自分を責めてもいけない。そんなの、勝手に大嫌いな自分が始めたことなのだから、従いたくなきゃ従わなくて良い。「してやっても良い」、これくらいの気持ちで出来ることで良いので私と一緒に「自分を大切にする」を始めてみてはいかがだろうか。
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