東洋医学オタクの三陰交語り 2024/5/9追記あり

どうやら朝ドラ『虎に翼』に三陰交というツボが出てきたらしい。
らしいと言うのは私は観ていないから。
なのでX(旧Twitter)で検索をかけて得た情報を交えながら、東洋医学オタクが三陰交解説をしていく。

1.そもそもツボってなに?
ツボ
よく耳にするがこれが何者なのかわかっている人は少ないと思う。
なんか押すと肩こりが改善するらしい程度が一般的ではないか。
ツボと言っても何種類もあるのはご存知だろうか。

今回のテーマでもある三陰交が含まれる体のツボ ➡ 経穴(けいけつ)
足もみやリフレクソロジーと看板を出してるお店が多い足つぼ ➡ 反射区(はんしゃく)
痩せるツボがあると話題の耳つぼ

パッと思いつくだけで3つもツボには種類がある。
これらはすべて別物なのでややこしい。
私が詳しいのは経穴と呼ばれるツボだ。
反射区も勉強したことがあるので多少知識はあるが、素人より知っている程度なので解説などは出来ない。
耳つぼはまったく知らない。痩せるツボがあるが、効能としては食欲が一時期に落ちるツボらしいので効能に負けない食欲があると意味がないらしい。

では経穴・ツボとはなんぞや。
起源は中国とされている。そう中国4000年の歴史の一つである。
とは言っても経穴に関しては約2000年前と言われている。
経穴の最初は『足臂十一脈灸経』というお灸で治療するためのハウツー本であるが、これはまだまだ初期段階の不完全なものである。
その後、『黄帝内経』という鍼灸や按摩、漢方で治療するためのハウツー本が出てきたことにより経絡経穴が確立される。
この黄帝内経が現代の鍼灸、按摩(マッサージ)の基礎となっている。
そう、経絡経穴とは鍼灸・按摩で治療を行うためのものである。
それは肩がこっているから肩のツボを使う、という単純なものではない。
肩が凝っているなら腕のツボを使い、遠隔治療をするためのものだ。
なぜ遠隔治療をする必要があったのか、理由は簡単で治療をする相手は身分が高い人物だからである。
臓器がある胴体に鍼を刺すわけにはいかない。下手したら治療者の首が飛ぶ。首を飛ばないように、でも治療はしなくてはならない。
そういう背景の元で発展したのが経絡経穴なのである。

2.三陰交ってなに?
三陰交、読み方はさんいんこう
三つの陰が交わる所という意味だ。
この三つの陰とはなにか、それは足の三陰経のことだ。

足の三陰経を説明するには経絡を説明しなければならない。
遠隔治療をするための場所がツボだということを思い出してほしい。
腕のツボを押して、どこを通って肩まで届くのか?それは経絡(けいらく)を通って行くのである。
経絡は臓腑に対応しているので臓腑の数だけ経絡がある。そして、経絡の途中にツボが並んでいる、
よく聞く例えは、経絡は下水道でツボはマンホール。下水道の点検のためにマンホールがあるように、経絡の不調を治すためにツボがあるのだという。
肩が凝っているということは、肩を通る経絡が滞っているのである。その滞りを腕のツボを押すことで改善して肩こりを解消するのである。

足の三陰経とは臓腑のうち、肝・腎・脾の経絡のことである。
この3つは足の先から始まり、足の内側を通って、胴体に入り、胸のあたりで終わる。
膝から下の経絡を絵にすると以下のようになる。

この流れの中に点々とツボが存在して、その中の一つが三陰交である。
三陰交は足の太陰脾経に存在している。(上記の絵では黄色のエリア)

3.三陰交ってどこにあるの?
経穴の具体的な場所だが

かたい うちがわ  けいこつないえん    こうさい  ないかせん     じょうほう    すん
下腿内側、脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸

とある。
とてもややこしい書き方なのでふりがなをふっておいた。(ずれていたら申し訳ない)
それでもややこしいことには変わりないのでもう少し優しく説明をしていく。
下腿内側とは、膝から下の中でも内側の部分を示している。
脛骨内縁の後際とは、膝から下の太い骨が脛骨、内縁とはその内側、後際とはその脛骨を内側に指を滑らせて骨のおわりの部分。
内果尖の上方3寸とは、足首の内側にある出っ張った骨が内果(くるぶし)、その出っ張った骨の尖端を示して内果尖とする。
さて、ここまでは解剖学の範囲であり、自身の体を触ればなんとなーくわかるような気はするはずだ。

問題は上方3寸だ。
上方とは上の方、つまり内果尖から上に数えて3寸ということになる。
この寸という単位は聞いたことはあるが具体的にどういう測り方なのかわかっている人は少ないと思う。
尺貫法では1寸は約3cmとされているが、経穴の場合においてはこれは意味をなさない。
経穴を測る方法は尺貫法ではなく、骨度法同身寸法を使うからである。
骨度法とは、体の部位の長さをあらかじめ決めておく方法である。
今回は三陰交なので、膝蓋骨尖~内果尖の長さは15寸と説明しておく。
同身寸法とは、もっと簡易的に経穴の場所を探すために手のサイズで大きさを決めておく方法である。
3寸とは、示指から小指までをあわせ、その中節を横にはかり、その幅を3寸とするとしている。
分かりづらいので絵にしておく。

これで三陰交が取れるようになった。
実際に自身の体を触りながら三陰交を取ってみよう!ツボは取ってこそ!楽しいぞ~!

右足の足首を出す
足首のぽこっと出てる骨の一番高い部分に左手の小指を当てて、そのまま指を揃えて足首に手を添える
左手の人差し指の第二関節の横に、右手の人差し指を置く(これで縦軸はOK!次は横軸だ!)
そのまま右手の人差し指をスライドさせながら動かして、骨のきわを探す
骨のきわを見つけたら、骨に向かって斜め下方向に押す!!痛い!!!!

ツボは押してもいいが痛いし、素人が押すだけだとそこまで効果はないのでやる気があるならせんねん灸を買ってお灸をするのがいいでしょう。
そう、ツボを押すのもコツがいるのでお灸が手軽なのだ、聞いてるか山田よね。
三陰交に限らず婦人科疾患はお灸が良いとされているのだから押すよりお灸だ。
しかし日本の法律ではセルフケアとして自身にお灸をすることは合法だが、他人にお灸をするのは違法なのだ。他人にお灸をするにはきゅう師の国家資格が必要になる。
山田よね、怒って悪かった。
いや待て、あはき法は昭和23年から施行だから昭和7年の虎に翼では合法の可能性出てきた。
当時の鍼灸は都道府県ごとに取締規則を設けていたので、虎に翼の舞台である東京都で調べてみた。
昭和5年の東京都では医療類似行為(鍼や灸)は行うのに届け出をする取締規則を設けていたようなのでやはりお灸を他人にすることは違法だったようだ。
すまない、山田よね。ツボを押すしか出来ない男よ。

だが山田よね!!貴様にはまだ言いたいことがある!!
三陰交の取り方が間違っているぞ!!
山田よねは自身の手で猪爪寅子の内果尖から3寸を測り、三陰交を取ってツボを押していた。
そう!山田よねの手で猪爪寅子の三陰交を取ったのである。
同身寸法は自身の手で自身の体を測るから成立するのである。
手の大きさと体の大きさはある程度比例するいう前提で成り立っている。
背丈の同じ同性同士ならまだしも、異性間では同身寸法は意味をなさない!!おしいぞ山田よね!!
では山田よねはどうしたらよかったのか。骨度法を使えばよかったのである。
座った状態だと膝を90℃曲げているので膝蓋骨の位置が動いてしまっている。
なのでまずは軽く足を伸ばしてもらい、膝蓋骨尖を探り、内果尖との距離を測る。
ここの距離は15寸だから、半分の位置を取る。7.5寸だ。
そのまた半分を取ると3.75寸。
親指ひと幅分が1寸なので猪爪寅子の親指を借りてだいたいでいいので0.75寸分下を取ると三陰交が取れる。
慣れてくると三陰交は反応が強いツボなので、おおざっぱに位置取りをしてからツボの場所を探ってもいいだろう。

ツボの反応というと言葉で説明するのが難しいが、三陰交のあたりを触っていると明らかにほかの皮膚とは違う様子の場所があるのである。これは練習して指の感覚を鋭くしていくしかない。
ツボは生きているので教科書通りの場所にあるわけではない。
今日の今この瞬間の三陰交を見つけられるようになったら効果はもっと出てくるのでやる気のある人は是非たくさん触ってみてほしい。

4.三陰交ってどんな効果があるの?
虎に翼では生理痛で使われたように、三陰交は婦人科疾患の定番のツボである。
他にも、貧血や末端冷え性、むくみ、食欲低下にも効果があると言われている。
逆子にも効くと言われいる。逆子には三陰交だけではなく膀胱経の至陰(しいん)と組み合わせて使うと良い。
三陰交にお灸をすると子宮の血流量が上がり、その結果子宮が温まるので婦人科疾患に効果があるのである。
また、三陰交は女性の足三里(あしさんり)とも言われており、虚弱体質や長寿にも効果がある。

では足三里とはなんぞや。
足三里に関しては有名な話がある。
それは松尾芭蕉の奥の細道に登場したのである。
奥の細道の序文に「三里に灸すゆるより」という文が出てくる。
三里とは足三里のことである。
足三里は日本では万能のツボのように語られており、健脚、健康長寿の秘訣のようになっている。
松尾芭蕉の長い旅路を支えたひとつに足三里があると言われている。

先ほどやる気がある人はせんねん灸を買ってお灸をするといいと言ったが、生理痛には三陰交ともうひとつツボを組み合わせると良い。
それは関元というツボである。
これはお腹のへその下2寸のところにあるのでせんねん灸でセルフケアをするには少々難しい。
やけどの危険があるので無理にしないでほしい。
そこで、低温タイプのカイロを貼ることをおすすめする。
生理痛が酷い人はみなお腹にカイロを貼っているとは思うが、そこにはちゃんとツボがあり効果がある。
私が低温タイプをおすすめする理由は、強すぎる外部からの熱は逆に中を冷やしてしまうことがあるからだ。
暑い夏に汗をかいて体温を下げるのと同じようなことが起こると考えてほしい。強すぎる熱を加えられると熱から体を守ろうと冷えを生むのだ。
体が冷えれば痛みが生まれる。温めるといいと思い過剰に温めすぎるのも逆効果になることがある。
そういうことが起こらないように低温タイプをおすすめしたい。

5.最後に
気がつけば文字数は4000字を超えていた。
ここまで読んでくれた人がどれだけいるのかわからないが感謝を伝えたいと思う。ありがとうございます。
私が東洋医学オタクになったのは、私の体の不調を西洋医学では治せないし原因すらも解明できないからである。
医者からは体質だと匙を投げられたほどの病弱だ。寝たきり状態になってからまともに働けるようになるまで10年かかった。
医者からも匙を投げられたこの体調不良を初めて治してくれたのが鍼灸だ。治すことはもう諦めていた私は本当にうれしかった。
だから私は思う、西洋医学が得意とする疾病はある。しかし、西洋医学が不得意とする症状もあるのも事実なのだと。
西洋医学は、なんとなく体調が良くないといういわゆる不定愁訴と言われる症状が不得意だ。
あとは痛み止めの効かない原因不明の頭痛や原因不明の腰痛なども不得意だ。
共通点は『原因不明』であること。そう、原因がわからないと医師は治療が出来ない。
それは西洋医学の薬というものがそういうものだから仕方ない。
しかし、これらの症状は東洋医学が得意とするものである。
最近では気象病が世間に広がっていて、それに伴って五苓散という漢方が人気になってきた。
気象病とは気圧の変化によって頭痛や倦怠感が起こるものだ。気象病の頭痛は痛み止めが効きにくいことが多いが、五苓散は効果を発揮する。
機序の説明をするとまた4000字かかりそうなので割愛していくが、東洋医学である漢方の方が効果があるのも事実。
西洋医学では原因不明で治療が出来ない症状に効果を出してくれるのが東洋医学なのだ。
日本では国民皆保険の制度のおかげで医療が気軽に受けられる利点があるが、東洋医学も日本には存在していて、体の不調の時に診てもらう選択肢の一つに東洋医学が入ることを願っている。

2024/5/9追記
山田よね女性だったの~~~~!?!?
あのシーンのスクショしか見てなかったから知らんかった!
和装の女性の中でただひとりスーツ姿だったから勘違いしてた!
なら同身寸法でもいいのかもしれないなぁ
背丈が同じなら

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