[本屋大賞]「カフネ」感想

こんころです。GWも終盤に差し掛かり、絶望の足音が聞こえる今日この頃。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私は書き溜める予定の半分もブログを進められず咽び泣いています。あと鳩舎も…

今回は読書回。未だ読み終えていない大量の『ロード・エルメロイ2世の冒険』に背を向けつつ、新しい本を読んでいきます。(ホンマごめん、未だにフェムの船宴読めてない)

今回読んでいくのは、本屋大賞作品『カフネ』。

本屋大賞といえば、なんとなく買ったかがみの孤城未だに読めてない…

 

※以下、そこそこのネタバレを含みます。劇中台詞とか引用しちゃう。

 

 

本を買い、読むまで

引っ越し間近の4月某日。なんか権威ありそうだし…それでいてポピュラー感あるし…かなり面白かった成瀬に勝ってるし…の気持ちで手を伸ばした本屋大賞コーナー。

流石に全部は買えないので、趣味が合いそうな6位『Spring』と、1位の本作を購入しました。ついでに気になってたレーエンデも買った。1巻だけ。

『Spring』は買ってすぐに数日かけて読んだわけですが、本作はなんとなく一ヶ月ほど寝かせてしまった私。GWで帰省した際、病院に行く日があったため、そこで読むことに。

 

感想1:読みやすさ

かなり読みやすいです。亡○の烏と同じくらいか、それ以上の速さでサラッと読めました(3~4時間くらい?)。軽妙でありながら知的なボケも随所に入るので、お話を面白がりながらサクサク飲み込めちゃう。悪口のセンスが良い作品、好き。

感想2:シナリオ

『「おいしい」と泣くことから、再生は始まる』。帯紙のこの一節が、全てを物語っていると思います。

噛み砕いて言えば、夫に離婚されて弟も喪い、アルコール依存症に陥った女性・野宮薫子が、弟の遺産相続の関係で元カノである小野寺せつなに接触し、色々あってせつなの勤務先である家事代行サービス会社「カフネ」でボランティアを始めるというお話。

薫子の再生から物語が動いていき、家事代行サービスを通じていくつもの「再生」に立ち会うのが本作の(表の)ストーリーライン。

当然、「再生」するわけですから、家事代行サービスで向かう家庭は皆問題を抱えていたり、押し潰されそうになったりしています。この諸問題の選定と解答が本当に見事というか、地に足がついた話運びなんですよね。

例えば、ある家庭の子どもは反抗期のひねくれ者。おにぎりを握るのを手伝ってほしいと言われたら、「それで私になんの得が?」と言い放つし、自分の環境(母子家庭、母はパート掛け持ち、日本の貧困化、地球温暖化etc…)に絶望して「生きていく意味がない」とか言っちゃう子。

そんな子に対し、せつなはその絶望を否定したりせず、しかしこう言うのです。

「未来は暗いかもしれないけど、卵と牛乳と砂糖は、よっぽどのことがない限り世界から消えることはない。あなたは、あなたとお母さんのプリンを、自分の力でいつだって作れる」

      ──阿部暁子『カフネ』(講談社) P111より

物価高ェ…

『カフネ』はこの姿勢が最初から最後まで一貫してるんですよね。現実に抗いはするが、現実を変えたり、越えたりすることはない。しかし、時には「食」の彩りを救いとして、時には連帯して、暗い現実を生きていく。

本作には上記以外にも、現実に存在するかもしれない”誰か”に寄り添うメッセージが随所に仕込まれています。書店員が勧めたくなるのもよくわかるというもの。

まあ気になるところも二点ほどあったりはします。一つは、同性愛者の人がかなり悪印象なこと。いやまあ、ああいう人いそうですけど、それはそれとしてなんだかなぁという感じ。(変態系ではないのでそこは安心してね)

もう一つは、現実感がある分、苦しみの描写も結構リアルであること。特に序盤の薫子はかなり心に来ます。だからこそ再生パートが映えるのですが。

 

まとめ

ほんとすぐ読めるし名文の宝庫なので買ってみてください。一気読みが無理な場合は、休みの日に一日一章くらいがオススメ。

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