夢野久作が読みたくなるボブゲ【古書店街の橋姫】

以前、『スロウ・ダメージ』を紹介した時にオススメのBLゲーも紹介したのですが、紹介しといてやったことのないタイトルがありました。

それが古書店街の橋姫

この作品、『Cool-B』というBL&乙女ゲームマガジンの第3回BLゲーム大賞で、2016年の作品ながら、なんと2位とWスコアの大差で大賞を受賞した作品!
まぁ、2位の『ラッキードッグ1』も2009年の作品なんだけど…
(ちなみに4位にコンシューマー版の『古書店街の橋姫 々』も入っているので、その投票数も合算するとトリプルスコアになるという化物です)

いつかやりたいなーとDLsiteで購入ページを見ながらも、「どんなゲームか全く分かんねえな…」と思い続けて早数年。
この度ついに!!謎のノリと勢いで購入しました!!

今回はプレイ始めて速攻で川瀬に落ちた腐女子のプレイレポートです。

今回もプレイしたのはR-18のPC版ですが、コンシューマー版の全年齢向けもあるので、未成年の皆様もぜひ最後までお楽しみください!

古書店街の橋姫

大正十一年六月 梅雨の神保町

会津から上京してきた玉森は、帝大合格を目指す浪人生。
しかし底知れない空想癖とだらしない性格が災いし、
たった二年で下宿先に見限られてしまう。

とある縁で古書店・梅鉢堂に住み込みで働くことになった玉森は、
同郷の親友らに甘えながらも浪人生という猶予期間を謳歌していた。

そんな中、頼りにしていた親友の相次ぐ自殺と怪死
雨の降る三日間をなぜか繰り返していることに気づいた玉森は、
彼らをうため神保町を奔走する。

何が現実で、
何が幻覚なのか。

友人の死の謎を追う、ポップオカルトな大正ミステリー

公式サイトより引用

『古書店街の橋姫』は同人ゲームサークル「ADELTA」によって、2016年の夏コミにて頒布された18禁BLゲーム。同人ゲームながら、本編はフルボイス。美麗なスチルも数多く描かれています。BGMもおしゃれで耳に残るものばかり!

現在は各ゲーム配信サイトからDL販売もされていますし、PSVitaSwitchにも移植されている、今最も遊びやすいBLゲームの1作になります。
ジャンルは「奇書と幻覚のBLG」

前回紹介した「ウウウルトラC」でも少し書きましたが、今作の特徴は攻略対象によってジャンルが変わる点

水上ルート「恋愛小説」川瀬ルート「探偵小説」花澤ルート「冒険小説」博士ルート「科学小説」能面の男ルート「怪奇小説」と、ルートによってジャンルががらっと変わるので、同じ主人公の作品なのに全く違った作品を読んでるような感覚になります。
まぁどのルートでも「拗らせすぎだろ、この幼馴染ども……」とか思ってましたが。

BLゲームとしてはよくある主人公総受けモノで、選択肢によって各ルートに分岐するというもの。
しかし攻略順は固定であり、選択肢も各ルートに分岐する直前の1か所しかありません。
その為、ゲームをプレイしてるというよりはボイス付きの小説を読んでるような感覚。
私は主人公に感情移入ができなかったので、本当に観測者として楽しんでました。
(玉森が特殊すぎるんです…恋愛小説の主人公としては不合格だよあの子…)
好きなキャラから攻略することはできませんが、どの攻略キャラも一癖も二癖もありすぎて飽きることがないのであまり気になりませんでしたね。
(最初の水上√は長すぎて今本当に水上を攻略してるのか自信を無くしそうだったが…全キャラ共通ルートなので仕方ないね…というかあの感覚、遙か3の有川譲を思い出したよ…好きだっつってんだろ!!!!!)

今作の魅力と言えばやはり「大正浪漫」「近代文学」でしょう!
舞台は大正11年6月の神保町
大正浪漫薫る純喫茶に街中を走る路面電車
東洋キネマでは活弁が音のない映画に命を吹き込み、キャラメル売りの少年が客席の間を売り歩く。
雨に濡れ冷えた体をキカイ湯の銭湯富士を眺めながら癒した。

さらに出てくる出てくる近代文学の名作たち!!
黒岩涙香「幽麗塔」尾崎紅葉「金色夜叉」泉鏡花「婦系図」夢之久作「ドグラ・マグラ」、その他にも押川春浪夏目漱石芥川龍之介吉屋信子江戸川乱歩など。
作中でも明らかにあの作品をモチーフにしたんだろう表現や展開があるので、近代文学好きの人なら「ニヤッ」とするシーンが随所にちりばめられており、文豪について調べたことのある人なら、作中の違和感に「おや?」となると思います。
大正11年という年にピンと来る人もいるのではないでしょうか。

この作品、とにかくスチルが素晴らしい。
こちらは玉森の幻想シーン。心象風景が現実を侵食する、まるでFateの固有結界のような感じだが、これは全て玉森の妄想である。なぜか博士には見えているが…。

玉森の幻想は極彩色でポップな明るいカラーで描かれているが、現実はといえば、

どこか薄暗いレトロを感じさせるセピア調で彩られている。
この現実幻想の彩色の差が、幻想の異質さをより際立たせている。

 

登場人物紹介

玉森

  CV:藤桐 花
今作の主人公。総受け
文士志望の浪人生。20歳。
しかし勉強は全くしておらず、空想小説や活動写真(映画)にうつつを抜かし、原稿用紙に妄想の産物を書き散らす日々。
二年前、幼馴染の水上川瀬と共に会津から上京してきたが、一人結果が出せず、下宿先から追い出されてしまい、今は優しい店主に拾われて神保町一丁目にある古書店・梅鉢堂にて住み込みで働かせてもらっている。プライドが高く見栄っ張り、わがままで幼稚、そして薄情。
とにかく褒めるところが見当たらないほどのダメ人間
眼鏡も伊達眼鏡であり、知的に見えるからかけている。
唯一の長所が速筆。短編ならば一晩で書ききるその執筆速度だけは川瀬からも認められている。
自身の妄想が現実と区別がつかないことがある。

今作は彼視点で物語が進行するが、とにかく彼の思考とプレイヤーの思考が一致しない。
鈍感とかそんなレベルではなく、親友の死に何の感情も抱かないなど、どこか人間性に欠ける部分が見えるのである。玉森はそんな薄情な自分が信じられず、友情とは何かを模索し始める。
親友の死の後に突如発現した『時間跳躍』の力を使い、親友の死の謎を追うのと同時に、自信の友情を証明する為に奔走していく――。

恋愛ゲームらしからぬタイプの主人公で、友情も分からなければ、もちろん愛にも疎い。
BLゲーム、つまり恋愛ゲームをしているはずなのに、全く色恋の話にならないので、本当に自分はBLゲーをしているのか自信が無くなってきます。
しかしもちろんこれはBLゲーム!!
数多のループを繰り返し、彼は攻略キャラと向き合っていきます。

水上

  CV:神崎智也
玉森の幼馴染で酒造家の長男。21歳。
現在は小石川二丁目にある篤志家に世話になりながら、帝国大学文学部に通っている。
泰然自若、常識人でとても寛容、争いを好まない性格。
玉森を甘やかしガチ。玉森がわがままで幼稚なまま大人になってしまったのは、半分くらい水上のせいだと思う。病的なまでの読書家で、読み始めると寝食を忘れて読み続ける。
梅鉢堂の蔵書も全て読破するほど。特に好きな作家は夢之久作。
玉森の作品も楽しみにしており、生き甲斐とまで言うほど。
しかしそんな玉森と共に活動写真に行く約束を持ち掛けておきながら、彼は自殺してしまう――。

第一の攻略対象。ジャンルは「恋愛小説」
まず彼のルートから始まるのだが、とにかく長い
これは彼のルートが共通ルートになっている為な所もあるが、何よりもこの男、大変強情なのである。いくら玉森がループして彼が死なないよう行動しても無駄。彼はそれはもうあらゆる手を使って自殺してしまう。その本心を打ち明けることなく――。

マジで何を考えているのか分からなかった。本心を全く匂わせもしなかったのには正直脱帽。いやまぁ想像出来る理由ではあるんだが、あまりにもそういう雰囲気を一切出さなかったので、玉森同様かなり疑心暗鬼に陥ってた。
プレイヤーですら分からないのだから、玉森に分かるはずもなく……。是非ともプレイして彼の本当の姿を見届けてください。
冒頭にも書きましたが、彼のルートは「恋愛小説」です。それはもうめんどくさい男達の恋愛物語をお楽しみください。

川瀬

  CV:マルクス
玉森と水上とは同郷の幼馴染。20歳。
帝大医学部に通う天才帝大生。追っかけがいるほどの美男子
しかしその正体は超潔癖症の鬼畜紳士。気に食わないことがあれば女性であろうと平気で罵る。
特に玉森に対しては容赦がなく、玉森を馬鹿にすること日課。玉森をいじめることだけが、彼の唯一の趣味である。
玉森の作品の批評を買って出ているが、水上とは正反対でとにかく酷評する。原稿に煙草を押し付けるわ、ちり紙扱いするわ、とことん酷評する。
他人が見れば「昨日再会した敵同士」と揶揄されるほどだが、それでも玉森の一番の親友であり、一番の天敵である。彼らにとっては幼い頃から変わらぬ親しい関係なのだ。

第二の攻略対象。ジャンルは「探偵小説」
玉森は少年探偵団「不正規連隊」と共に、とある殺人事件の犯人に迫っていく。

いや、もう、あかんて…このドS男めっちゃタイプ。無理。しゅき。
物語は玉森と川瀬の喫茶店のシーンから始まるのですが、もう第一声から好き。
玉森をそれはもうゴミのように扱う川瀬に即落ちした。
開始1分で「古書店街の橋姫」にハマる確信を与えた男。

彼のルートは前の水上ルートと打って変わって、とにかくハードモード
水上ルートとはまた違った理由で、クリアできる気がしなかった。
なぜそこまでハードモードだったのかは、川瀬ルートクリア後に解放されるとある人物のプロフィールを見れば分かる。これはひどい。
いや、もう、ほんと……水上といい…なんなんだこいつら!!!!!!
もうちょっと分かりやすく好意を見せてもらっていいですかね!?
いや、まぁ…川瀬はまだ良い……この後の奴に比べれば……
まだ彼に関しては、可愛い子は虐めたいっていう分かりやすい動機ですよ。幼少期が激重だけど…
彼の愛に対する玉森の答えが最高に滾りました。あそこであの行動取れるなら、それはもうだよ……。
攻略キャラの中では断トツで好きなキャラです。

花澤

  CV:桜花大夫
玉森達と同じく会津出身の幼馴染。23歳。
中学卒業後、会津を離れ陸軍士官学校へ。現在は陸軍科学研究所に所属する陸軍少尉。
質実剛健、絵に描いたような日本男児
同郷の4人は幼少期仲良くしていたが、花澤は次第に距離を置くようになり上京後は八年間疎遠に。玉森は花澤を最も尊敬し頼りにしており、そして花澤も玉森にだけは笑顔を見せ、弟のように可愛がっていた。
帝都に来てから新たに親友が出来たのだが、そのことに玉森と川瀬は「花澤が変わってしまった」と複雑な感情を見せている。

第三の攻略対象。ジャンルは「冒険小説」
今作きっての超問題児。最後にして最もめんどくさい幼馴染。
水上ルートから大分アレだとは思ってたけど、本人のルートが一番ヤバかったやつ。
良くも悪くもあの頃の日本男児を体現したような男。全てはお国の為。この国を守るために全てを犠牲にしてでも邁進する男。
とにかく真面目過ぎる
動機がバカなのよ。そんなことの為にここまでしたのかと、モニターの前でキレたのは内緒。
空想好きであり、SF小説好き。実は玉森の書く空想小説が好きで、その情熱たるや…。
ラストは衝撃の一言。脳が理解するのにかなり時間を要した。
EDでこのルートのタイトル見たときは笑ったwwとにかくぶっ飛んだラストですw
しかしこのラスト実は結構好き。
他ルートと違って、玉森が引っ張っていくのが良い。
そうだ玉森。お前しかこの男を幸せに出来ないんだ!!幸せに地獄で暮らせよ!!

氷川博士

  CV: 遠野誠
黒い眼帯が特徴の梅鉢堂の常連客。本名は氷川喜重郎。24歳。
おどおどと挙動不審な青年で、すぐに謝ってしまうほど気弱。
しかし好きなこととなると急にテンションが上がり饒舌になる。その姿は少し変態チック。
なぜか玉森の熱狂的な大ファンで彼の作品を大絶賛しているが、玉森からは気持ち悪がられている。
花澤の親友であり、博士と呼ばれている。お互い趣味が合い意気投合。無二の大親友になった。
実は天才発明家で帝国陸軍技術大尉でもある。

第四の攻略対象。ジャンルは「科学小説」
これまでのルートでその奇人変人っぷりを否応なく見せつけてきたが、いざ蓋を開けば今作きっての癒し枠。玉森を一途に想い続ける博士に涙が止まらない。
「お前博士のこと幸せにしなかったら許さねえからな!?」とプレイ中ガチで思ってた。

四人目にして初の幼馴染ではない攻略キャラということもあって、いかにあの幼馴染たちが歪だったかが良く分かる。本来恋愛ってこういうもんなんだよ!!!!
これまでめんどくさい男ばっかりだったので、博士の素直な愛情が身に沁みました…。
なお玉森からは前述した通り花澤の親友ということで、猛烈に嫌われています。
その為か、博士に対して冷たい態度を取ってしまったり、嗜虐的になってしまったり。
でも博士がドMな為、割とうまくいっている模様。
ちなみに川瀬も花澤のことを尊敬している為、川瀬>花澤>博士>玉森というとんでもない泥沼関係になっている。
まぁ実際はみんな玉森が好きなのだが。どのみち川瀬からそれはもう殺されそうな勢いで嫌われている博士なのであった。

覆面の男

  CV:美藤秀吉
玉森の前に突如現れた謎の大男。195㎝。
能面を被り佇むその姿は、見る者に恐怖心を与えるには十分の異形の者。
玉森を見つけると追いかけてくるが、敵意はない模様。
しかし玉森以外には暴力的になり、川瀬や花澤を問答無用で殴り殺す。
目的もなら、理由も。全てが謎に包まれている。
こんな見た目ながら、声が可愛い
第五の攻略対象。ジャンルは「怪奇小説」
最後のルートであり、これまでの根底を覆すルート。
初見珍しく納得いかなかった。こちらのルートクリア後もやもやした人は公式サイト奥付のQ&Aを見に行ってください。
ジャンル通り、今作の怪奇ホラー担当。各ルートでそれはもう大暴れしてくれます。
しかし彼自身はとてもいい子です。
彼がなぜ川瀬たちを殺すのか。それにはとある人物が深くかかわっています。
その謎自体は水上ルートから明かされるのですが、まさか彼のルートがあんな展開になるとは予想もしておらず……。しばらく開いた口が塞がりませんでした。
このルートの玉森もめっちゃ好きだけどね!!???
それよりもこのルートにしか出てこないハイカラな男攻略したいんじゃが!!!!?????

感想

いやーー、ほんとなんで今までやってなかったのかとめっちゃ後悔しましたね。
プレイしてない人に今すぐオススメしたいBLゲームNo.1です。

とりあえず川瀬という男を知ってほしい。


人を足蹴にするのがとことん似合う男。
こちら皆様ご存じ「金色夜叉」の有名なシーンですね。熱海に銅像があります。

しかしこのシーン、何回見てもちゃんと演技してるのが面白いw舞台俳優目指しなよ。

今すぐ体験版インストールして欲しい。もっぺんリンク貼りますね!

コンシューマー版の「古書店街の橋姫 のまは全年齢向けになり、さらに書き下ろしショートストーリーがフルボイスで実装されています。
えろしーんも見たいよって人はPC版でスチル盛りだくさんのえちえちしーん見て、もっと橋姫浴びたいよって人は「々」もプレイしてください!

正直えろしーんはあんまり期待してなかったんですよ……。お話自体がかなり面白かったので、えろはおまけ程度かなって…。
それがいざ始まってみれば、大量のスチルでそれはもう丁寧にえっちしてくれましたよ!!
これを見ないのは勿体ない!!18歳以上の紳士淑女の皆様はぜひPC版もプレイしてください!

さてすべてクリアしての感想なのですが、ブログとして書き起こすのに結構時間が空いちゃいました。正直プレイ直後の感想はもうどっかいっちゃいました…。クリアしたの去年の10/15なんですよね…

今作の主人公・玉森は「信頼できない語り手」です。
玉森には空想癖があり、その妄想から生まれる幻想は現実と区別がつかないほど。「晴彦さん」「蛙男」は、玉森が書いた『大蝦蟇の梅雨』の登場人物でありながら、現実世界にも現れ自由に動き回ります。


この蛙男がかわいいのなんの。
『大蝦蟇の梅雨』は川瀬に著作をけちょんけちょんに貶された玉森が、「川瀬を夢中にさせる、イイナと笑う物語」として書き上げたもの。
川瀬ルートを終えてから考えると、どうしてこれで笑うと思ったのか…。あの日川瀬が笑っていたからなのか…。

さらに過去の嫌な記憶なども、その幻想で書き換えてしまうことがあります。
その為、一周目では意味の分からない行動に見えたことが、二週目では「だからこうなったのか」という風に、意味が理解出来るようになります。
何が現実で、何が幻想なのか。
とにかく貼られた伏線の回収が気持ちいい作品です。
ちなみに玉森のキャラ造形は、「ドグラ・マグラ」の主人公と、太宰治の「断崖の錯覚」の主人公をモデルにし、とにかくむかつくな、嫌われるだろうなという負の要素を詰め込んだそう。これでピンと来る人はこの作品を楽しめると思います。他のキャラにも参考にした文学作品や作家がいますので、当ててみてください!

クリア後には公式サイトの奥付にある「後日談」やQ&Aをぜひ呼んでください!
ゲーム内では分からなかった、攻略キャラ達の心情を知ることができます。

総評

幼馴染の拗れまくった関係が好きな人。
タイムリープものが好きな人。
大正時代、近代文学が好きな人。
怪奇小説が好きな人。
BLが好きな人!!

皆様にオススメ出来る作品です!

とりあえずここまで読んでくださった皆様、今すぐ体験版をプレイしてください。
合う合わないはあるかと思いますが、プレイ1分で川瀬にビビっと来た人は絶対にハマります。
今すぐ体験版をプレイしてください。

 

 

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